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M型ライカの完成形。名機「M4」との出会い

カメラには数々の名機がありますが、さまざまな伝説に彩られた別格の存在といえば、やはりドイツのライカがその筆頭ではないでしょうか。私がライカを手に入れたのは大学4年のときですから1980年代の頭のことでした。その馴れ初めを話し出すと、とりとめがないので別の機会に譲るとして、フィルム時代におけるライカのひとつの完成形といわれるライカM4を入手したのは、結構あとのこと。それは確か今から1990年代のはじめ頃だったと思います。

その私にとって最初のM型ライカが、1968年に製造されたライカM4。銀座のある中古カメラ店に、なんの気なしに入ったところガラスケースに、このブラックペイントのM4が鎮座していたのです。しかも、その価格は驚くほどお手頃。早速、店員さんに声をかけて手に取り、「なんで、この値段なんですか?」と尋ねると「程度がそれなりですからね」だって。見たところ軍艦部のカドが凹んでいるぐらいで、それほどひどい状態ではなくシャッターも問題なし。価格を公表するのは控えますが、当時の相場の半分以下だったと思います。

ブラッククロームを探していたはずが、偶然の出会いからブラックペイントに!

実は当時、ライカM4を買おうと思ってはいたのですが、ブラックペイントは当然、手が届かず、後期に作られたブラッククローム仕上げだったらなんとかなるかな、と探していたところでした。

ところが突然、高嶺の花と思っていたM4ブラックペイントが格安で眼の前に現れたのですから、買わないという選択肢はありません。「じゃあコレ買いますから銀行でお金おろしてきます!」とキープをお願いし、ブラックペイントのM4はめでたく私のものとなったのです。しかし銀行に残高があって良かったぁ。あの頃だったら(今もそうだけど)、残高ほぼ無しってこともありますからね。

銀座の路地裏で発見したニコンの超広角レンズ

今回の写真で、そのライカM4に装着しているのはライカの純正ではなく、なんと「ニッコール21mmF4」です。

かつてM型ライカの超広角レンズといえばドイツのレンズメーカー「シュナイダー」が製造した「スーパーアンギュロン21mmF4.0(後にF3.4に改良)」でした。しかし高額でなかなか入手できません。そこでライカに装着できる国産の超広角レンズを探していたところ、偶然にもニコンがF型の時代に製造した「ニッコール21mmF4」が見つかったのです。

それはもう30年近くも前のこと。ある日の夕方、薄暗くなった銀座の路地裏に、ひっそりと佇む中古カメラ店を見つけました。ライカをはじめニコンやキヤノンなど国産と舶来のカメラやレンズ、アクセサリーがゴタゴタ並んだ棚の隅に、このニッコールを装着したライカM2が眠っていました。

もちろん、本来ならニコンFのレンズですからマウントが違うので装着出来ません。しかし前の持ち主は、このレンズをどうしてもライカで使いたかったらしく、多分、専門業者に依頼してニコンF用の接写リングを加工してアダプターを作らせ、それをM2に装着した状態でカメラ店に売却したらしいのです。

しかしライカM2はすでに持っていますし、M3もあるので、これ以上、ボディを増やしたくはありませんし、ボディとレンズ一緒で20万円ぐらいなので結構、お高い。そこで店主に「レンズだけ売ってもらえますか?」と尋ねたところ、意外にも快く承諾していただき、わずか数万円で、めでたく購入できたのです。

その直後に開かれた「東京カメラ倶楽部」(写真家の田村彰英さんが会長を務めた写真とカメラ愛好家のクラブ。クラシックカメラ評論で知られる田中長徳さんなども理事として参加していた)の総会には、これを持参し、チョートクさんにニッコール21mmを格安入手したことを伝えたところ、突然、大声で「この人はニコンの21mmをライカ・アダプター付きでウン万5000円で買ったそうで~す!」と高らかに紹介されたほど。それくらいニッコール21mmは貴重なレンズだったというわけですが、大声で紹介さたのは、さすがに恥ずかしかったですね。

自分史に残るカルフォルニアでのベスト・ショット

このニッコールの21mmレンズは、一眼レフのニコンF用ですが、実はレンズの後玉が大きく突出していて、そのままFに取り付けようとするとミラーに当たってしまい装着できないのです。そこでボディを操作してミラーアップし、そこに突っ込む形で取り付けますから、当然、通常のファインダーはブラックアウトしピント合わせもできません。ですからピント合わせは諦め、別体のファインダーをニコンFの肩のところ(フィルム巻取りレバーがある部分)に装着し、これで画角を決めたら、被写体までの距離を目測でレンズの距離目盛りに移し、広角レンズの深い被写界深度を利用して「まぁ、これでピントは合ってるだろう」と見当をつけて撮影するという、おおらかというか原始的な方法が採用されていたのです。ですからライカM型に装着した場合でも距離計にはまったく連動しないので、目測で被写体までの距離を測る必要があります。また、マウント・アダプターを作ってライカに装着させた前オーナーは、F用の21mmファインダーも脚を通常のアクセサリー・シュー用に改造し、ライカに取り付けられるようにしていましたから、なんとも用意周到な人だったんですね。

このレンズは実に活躍してくれました。思い出深いのは、1997年のカリフォルニア取材の際、レンタカーを運転してサクラメントからロサンゼルスまでカリフォルニアを南下していたとき、バックミラーを見るとすごい夕焼け! 慌ててクルマを路肩に止め、クルマを降りてカメラを構えると、向こうにサンタフェ鉄道の貨物車両が停車中でした。「こりゃ凄い風景だ!」と感動しつつ夢中でシャッターを切ったことを覚えています。

そして、このニッコールを皮切りに、キヤノン、ミノルタ、ロシアのミールなどの20mm系広角レンズを次々に手に入れ、アダプターを介してライカに装着して超広角撮影を楽しんだものでした。

今でもそれらのレンズは手元に残っていますが、デジタルカメラの発展と共にフィルムも現像代も高騰してしまい、ほとんど撮影に持ち出されることなく、防湿庫の中で惰眠を貪っているのだから、なんとももったいない話ではあるのです。

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